病院等の医療機関で使用されているレントゲン装置の処分は、主に産業廃棄物として処理する必要がありますが、それ以外にもPCB(ポリ塩化ビフェニル)が含有されているかどうかで処分の方法が大きく変わってきます。PCBは毒性の強い物質のため、法律で定められた方法で正しく処理しなくてはなりません。
では、いつまでに処分すればいいのでしょうか。今回はPCBが含まれるレントゲン装置の処分期限や、適切な処分を行わなかった場合の罰則等について詳しくご紹介いたします。
PCBとは?
PCBとは「Poly Chlorinated Biphenyl(ポリ塩化ビフェニル)」の略で、人工的に合成された化学物質です。2つのベンゼン環が結合した化合物であるビフェニルに塩素原子が結合した構造を持ち、以下のような特徴を持っています。
1.化学的安定性が高い
PCBは熱や化学物質に対して非常に安定しており、分解されにくい特性があります。
2.絶縁性が優れている
電気的特性が良いため、製造・輸入禁止となるまで、主に絶縁材料として広く使用されていました。
3.不揮発性・難燃性
揮発性が低く、燃えにくい性質を持っています。
これらの特徴から、電気機器の絶縁油や熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙等様々な用途で利用されていましたが、現在は製造・輸入共に禁止されています。
PCBの毒性
上記で、PCBの製造・輸入が禁止されていることを簡単にご説明しましたが、その理由として、PCBは脂溶性(油に溶けやすい性質)で、生物の脂肪組織に蓄積されやすい性質を持つ上に、強い毒性があります。
ここでは、PCBが持つ毒性についてご紹介いたします。
急性毒性
高濃度のPCBに短期間さらされた場合、以下の症状が現れることがあります。
【皮膚障害】
クロロアクネ(塩素化化合物である重度のニキビ様症状)が代表的です。
【肝機能障害】
肝臓の肥大や酵素の異常が起こります。
【粘膜刺激】
呼吸器や目への刺激があります。
慢性毒性
長期間の低濃度暴露による影響は以下の通りです。
【発がん性】
PCBは国際がん研究機関(IARC)により「ヒトに対する発がん性が認められる」と分類されています。主に肝臓がん、皮膚がん、乳がん等のリスクが上昇する可能性があります。
【神経系への影響】
発達中の胎児や乳児において、脳や神経系の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。また、記憶力や学習能力の低下も示唆されています。
【内分泌系への影響】
特にホルモンバランスが顕著で、不妊や生殖能力の低下を引き起こす可能性があります。他にも、甲状腺ホルモンの異常による発育遅延や代謝異常、免疫機能の低下により感染症への抵抗力低下があげられます。
古いレントゲン装置に注意!PCBが含有されている可能性があります
1990年以前に設置されたレントゲン装置には、PCBが使用されている場合があります。
環境汚染の進行が懸念されたことから、それらの確実かつ適正な処理を推進するため、2001年6月22日に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)」が公布され、同年7月15日から施行されました。
レントゲンに含まれる可能性のある低濃度PCB廃棄物の処分期間は、PCB特措法において2027年3月31日で終了します。
この期限以降は事実上PCB廃棄物の処分が出来なくなるばかりか、場合によっては罰金等が課せられることがあります。
一度、ご自身が持っているレントゲン装置がPCBを含んでいないかどうか、確認してみましょう。
PCBが含まれるレントゲン装置の処分方法
PCBが含まれるレントゲン装置(あるいはそれに関連する機器)を処分する場合、日本では厳格な法律に基づいて適切な手続きと処理を行う必要があります。以下に具体的な処分方法をご紹介いたします。
具体的な処分の流れ
【ステップ1.機器のPCB含有有無の確認】
1.メーカーや型番を調査する
レントゲン装置の取扱説明書や型番、製造時期を確認します。上記でもご紹介しましたが、1990年代以前に製造された機器にはPCBが使用されている可能性が高くなっています。
2.専門の分析
必要に応じて、機器内の絶縁油や部品を採取し、PCBが含まれているか分析します。この作業は、基本的に専門業者に依頼します。
【ステップ2.PCB廃棄物として登録する】
PCBを含む機器であることが判明した場合、環境省のPCB廃棄物管理システム(JESCO等)に登録を行います。
【ステップ3.専門業者への委託】
PCB廃棄物の処理が認可された専門業者に処分を依頼します。主に環境大臣が認定する無害化処理認定施設及び都道府県知事等が許可する施設で処分することとなります。
専門業者へ依頼する際には、レントゲン装置を適切な方法で梱包し、処理業者に安全に運搬することが求められます。
【ステップ4.専門業者による処理】
主に高温焼却か脱塩素化処理の2つに分けられます。高温処理は1000℃以上の高温で完全分解、脱塩素化処理の場合は、化学的にPCBの分子構造を分解します。
PCB廃棄物を所持する事業者に課せられる罰則について
PCB廃棄物を所持する事業者は、上記でご紹介したPCB特措法に基づき届出と保管を行うと共に、定められた期限までに処分を行わなければなりません。
届出や処分を行わなかった場合、「法律違反」となり罰則が科せられます。
ここでは、どのような罰則があるのかをご紹介いたします。
保管及び処分状況の届出
PCB廃棄物(PCBを含むレントゲン装置)を保管している事業者は、毎年その保管及び処分の状況に関して自治体に届け出る必要があります。
届出を行わなかった場合、または虚偽の届出をした場合は、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
処分期間内の委託
事業者は、処分期間内にPCB廃棄物を自ら処分する、または処分を他者に委託する義務が生じます。
また、環境大臣または都道府県知事(政令指定都市の場合は市町)は、処分に違反した事業者に対し、「期限を定めてPCB廃棄物の処分等の必要な措置を講ずべき」等を命ずることができます。
この改善命令に違反すると、3年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に、またはこれを併科されます。
譲渡及び譲受けの制限
PCB廃棄物を譲り渡し、譲り受けることはできません。
これに違反すると、3年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、またこれを併科されます。
PCB廃棄物の適正な保管
PCB廃棄物の保管に当たっては、廃棄物処理法に基づく「特別管理産業廃棄物保管基準」に従う必要があります。この基準には「飛散」「流出」「地下浸透」「悪臭発生」の4つの防止等が定められており、基準に適合していない場合、都道府県知事(政令指定都市の場合は市長)は保管事業者に対し、期限を定めて必要な措置を講ずべきことを命ずることができます。
この改善命令に違反すると、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し、またこれを併科されます。
参考URL:PCB廃棄物を保管する事業者に課せられる規制|環境省
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PCB廃棄物の対応については地域や時期によって対応ができない場合も出て参ります。古いレントゲンが保管されたままになっている場合は、お早めにご相談ください。
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