「医療機器」と「美容機器」は、同じ「脱毛器」という名称でも、あるものは美容機器に、あるものは医療機器に分類されます。
医療機器の製造販売を業として行う場合、この分類を誤ってしまうと法的トラブルが発生するので、注意が必要です。
今回の記事では、「医療機器と美容機器」をテーマに解説します。それぞれの定義や具体的な機器について紹介するので、ぜひ押さえておきましょう。
また、よくあるQ&Aでは、起こりやすいトラブルを回避するための対策についてもまとめています。
これから医療機器や美容機器を取り扱う予定の人は、ぜひ参考にして下さい。
【1】医療機器と美容機器の定義と具体例とは?
医療機器と美容機器の、それぞれの定義と具体例について解説します。
医療機器とは?
医療機器とは、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)によって下記のように定義づけられています。
- 人や動物の疾病の診断・治療・予防などが目的である。
- 身体の構造・機能に影響を及ぼす。
医療機器は人体に与える影響が大きいため、業として取り扱う際には許可が必要です。
許可を取得する際の難易度は、機器に不具合が生じた際のリスクの大きさによって異なります。
管理医療機器(クラスⅡ)から規制が厳しくなり、認証・審査・承認が必要です。
【国際分類:日本の薬機法】
リスク小
↑
クラスⅠ:一般医療機器
クラスⅡ:管理医療機器
クラスⅢ:高度管理医療機器
クラスⅣ:高度管理医療機器
↓
リスク大
参考:薬機法(G-GOV)
医療機器の具体例
【クラスⅠ:一般医療機器】
体外診断用機器、メス・ピンセット等、医療ガーゼ、脱脂綿など
【クラスⅡ:管理医療機器】
MRI装置ワークステーション、眼科用内視鏡、気管支カテーテル、歯科用金属など
【クラスⅢ:高度管理医療機器】
透析器、人工骨、人工呼吸器、コンタクトレンズなど
【クラスⅣ:高度管理医療機器】
植込型人工心臓、ペースメーカー、冠動脈ステント、大動脈用ステントグラフトなど
美容機器とは?
美容機器は、下記のようなものです。
- 美容が目的である。
- 身体の構造・機能に影響を及ぼさない。
脱毛器の場合、機器のタイプによって分類が異なります。
体毛を処理する熱線式やローラー式は美容機器に、レーザー光線で毛根に影響を及ぼして脱毛する場合は医療機器に分類されることが一般的です。
医療機器に分類される製品であるにもかかわらず、許可を取らずに美容機器として製造販売すると、薬機法違反で摘発されます。
医療機器は、医療の専門知識のある者だけが使うことができます。エステティシャンが使用できるのは美容機器なので、注意して下さい。
非常によくあるトラブルなので、業として取り扱う機器の分類は正確に確認しましょう。
美容機器の具体例
美顔器
マッサージ用ローラー
超音波頭皮ケアブラシ
脱毛器(熱線式、ローラー式)
フットスパ
家庭用日焼け機
スキンチェッカー
など
【2】医療機器と美容機器 よくあるQ&A
次に、医療機器と美容機器に関するQ&Aを紹介します。トラブルを避けるためにも、ぜひ参考にして下さい。
(1)美容機器と謳えば医療機器の手続きは要らない?
「美容機器と謳って医療機器を取り扱えば、煩雑な許可取得の手続きを免れられるのではないか」と考えている人は、意外と多くいます。
もちろん不可能です。
ある製品が医療機器と美容機器のどちらに分類されるのかは、その効果・効能に照らし合わせて「行政」が判断します。
業者がどのような製品として取り扱っているかではありません。
本記事でも紹介したとおり、医療機器を美容機器だと偽って販売すると薬機法違反となります。
医療機器を業として取り扱う場合には、必ず正しい許可を取得しましょう。
(2)どこに相談すればいい?
医療機器の製造販売業・製造業の許可を取得する場合、まずは各都道府県の薬務課に相談することを推奨しています。
各都道府県の公式サイトにある「医療機器 許可取得」を取り扱ったページには、問い合わせ先が掲載されています。担当者が不在の場合もあるので、必ず事前に予約したうえで相談へ行きましょう。
それ以外の相談先としては、医療機器の審査・承認機関である「独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)」がよいでしょう。
審査や承認の流れについて一通り押さえておきたいという人にも、PMDAのサイトはおすすめです。
問い合わせ先:医療機器、体外診断用医薬品、再生医療等製品に関するご質問の場合(PMDA)
まとめ:医療機器と美容機器 分類はしっかり把握を
医療機器と美容機器の分類は、その機器の効果・効能に照らし合わせたうえで行政が判断します。必要な許可も異なるため、まずはどちらに分類されるのかしっかり把握しておきましょう。
医療機器を美容機器として製造販売すると、法律違反で罰せられてしまいます。
相談先は、医療機器についての最も身近な窓口である各都道府県の薬務課か、あるいは審査・承認機関であるPMDAに行いましょう。