医療従事者の方や医療機器製造販売の方の中には、副作用や感染症といった、患者さんの健康被害を目の当たりにした経験がある方もいるかもしません。
ある製品の使用が原因で健康被害が発生したのではないかと考えられる場合、医薬品関係者は専門機関へ報告する義務があります。
今回の記事では、「医薬品・医療機器等安全性情報報告制度」をテーマに解説します。制度の役割や報告すべき情報などについて紹介します。
医療機器による健康被害と報告の義務は、中古医療機器業界にも深く関係しています。万が一のときに備えて、ぜひ押さえておきましょう。
【1】医薬品・医療機器等安全性情報報告制度とは?
最初に、「医薬品・医療機器等安全性情報報告制度」について解説します。
(1)その役割と目的
「医薬品・医療機器等安全性情報報告制度(医薬機関報告)」は、医療の現場や日常生活において、医薬品や医療機器などが原因となって発生したと考えられる健康被害を厚生労働大臣に報告する制度です。
2003年より、薬機法第68条の10第2項で義務づけられました。
医薬品や医療機器などが市場で販売され始めた後も、引き続き情報を収集・分析・評価することで、ユーザーの安全を確保することを目的としています。
(2)報告対象と報告者
【報告対象】すべての医療機関及び薬局等
【報告者】医薬品関係者
例)薬局開設者、病院・診療所の開設者、医師・歯科医師・薬剤師・登録販売者・その他病院などで医療に携わる者のうち、業務上医薬品・医療機器・再生医療等製品を取り扱う者。
(3)報告対象となる情報は?
【対象】
・医薬品、医療機器、再生医療等製品
・医薬部外品、化粧品医薬品
【健康被害】
・当該品目の使用が原因だと考えられる疾病・障害・死亡といった副作用や、感染症、不具合など。
「医薬機関報告」の名称の通り、原則的には医薬品と医療機器等による健康被害の報告が中心です。
ですが、医薬部外品や化粧品による健康被害と考えられるケースについても幅広く募集しています。
また、本当に報告した製品による健康被害なのか明瞭ではない場合でも報告するよう、厚生労働省は呼びかけています。
報告対象にならない情報もある
健康食品や、無承認無許可医薬品が原因であると考えられる健康被害については、最寄りの保健所に報告して下さい。
(4)報告の窓口と方法
【報告の窓口】独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
【報告の方法】
・報告は、郵送、FAX、オンラインで行うことができます。
・オンラインによる報告は、最も誤送信のリスクがなく、セキュリティにも配慮しているため、最もPMDAが推奨しています。
(5)情報の取扱いと秘密保持
報告された情報は、PMDAで調査や分析などを行った後で、その結果を厚生労働大臣に通知します。
また、原則として、この医薬品や医療機器などを供給する製造販売業者にも連絡します。
報告者である医療機関などに対して、PMDAや製造販売業者などが調査を行うケースもあります。
その後、安全対策のために情報が国民へ公開されることがありますが、施設名や患者名といったプライバシーに関する部分は伏せられます。
(6)報告に期限はある?
医薬品・医療機器等安全性情報報告制度は、特に報告期限については定めていません。
ですが、健康被害の拡大を防ぐためにも、報告の必要性を感じた場合には速やかに報告するようにしましょう。
(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構とは?
医薬品・医療機器等安全性情報報告制度の報告先である独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)は、2004年4月1日に設立されました。
2001年に、国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構及び財団法人医療機器センターの一部の業務を統合しました。
PMDAは、国民保健を向上させることを目的としています。
主な業務内容には、医薬品の副作用や感染等による健康被害に関する情報収集・分析、医薬品や医療機器などの安全性の確認・指導・審査などがあります。
医薬品などの「健康被害救済」「承認審査」「安全対策」という3つの役割を1つの公的機関で担うのは、世界でもPMDAのみです。
まとめ:医療機器の不具合や副作用 安全のためにもぜひ報告を
「医薬品・医療機器等安全性情報報告制度」は、製品の使用が原因だと考えられる患者さんの健康被害を、PMDAを窓口として厚生労働大臣へ報告する制度です。
報告者や施設、患者さんのプライバシー侵害になることを恐れてしまう気持ちはわかります。
ですが、本記事で紹介したように、安全対策の一環として情報が公表されることがあっても、個人を特定するような情報は伏せられます。
さらなる被害を防ぐためにも、必ず報告しましょう。