医療行為の対価として医療機関に支払われる「診療報酬」。自身が経営する医療機関のある都道府県の、診断報酬の「平均点数」を知っておくことで大きなメリットが得られます。
今回の記事では、「診療報酬の平均点を知るメリット」について解説します。医療機関を円滑に運営するために重要なポイントでもあるので、ぜひ参考にして下さい。
【1】診療報酬の平均点数 知っておくメリット2つとは?
最初に、診療報酬の平均点数を把握するメリット2つについて解説します。
(1)経営の状況をチェックしやすい
各都道府県の診療報酬の平均点数はインターネットで公開されており、誰でも見られます。
自身の医療機関のデータと比較し、現在の経営が順調かどうかをチェックする指標として便利です。
開業直後は平均点数を目標にし、達成できたら、より高い売上金額を目指すことが一般的です。なかなか達成できない場合は、一旦立ち止まって改善策を練ることも重要です。
また、「診療報酬の平均点数」と「売上金額の目標」をしっかり定めてあると、1日あたりの患者数の目安も掴みやすくなるため、おすすめです。
(2)厚生局からの指導を避けられる
医療機関の運営には、常に厚生局からの指導が伴います。保険請求が適切か、保険診療のルールが徹底されているかといった指導は、厚生局の業務の一環でもあります。
厚生局からの指導を受けることは、法律で定められた医療機関の義務です(健康保険法第73条、国民健康法第41条など)
不備やミスがあるにもかかわらず、指導を拒否すると、重い処分になってしまうケースがあるので注意して下さい。
診療報酬明細書(レセプト)1件あたりの平均点数が、都道府県の平均の1.1倍を超えると、厚生局からの指導対象になります。
都道府県の平均点数は厚生局のホームページで公開されているので、必ず把握しておきましょう。
厚生局の指導の流れと結果
ここでは、厚生局の指導や結果について解説します。おおよその内容を知っているだけでも落ち着いて対応できるようになるので、ぜひ目を通してみて下さい。
【指導の流れ】
一度目は、講義形式の「集団的個別指導」が行われます。
翌年度に再び平均点数が高得点に該当すると、今度は「個別指導」を受けることになります。
その後、改善されたかどうかを確認する必要がある場合は、約1年後に「再指導」が行われます。
【指導の結果】
指導の結果は、約1ヶ月後に送られてきます。
「概ね妥当」…問題点が見当たらなかった場合です。指導終了です。
「経過観察」…問題点が軽微だと判断された場合です。指導終了です。
「再指導」…問題点が改善されているかどうかを、再度厚生局で確認する必要がある場合です。約1年後に個別指導が行われます。
「要監査」…不正請求が明らかになった場合です。「注意」「戒告」「取消」といった処分が下されます。「取消」の場合は、保険医療機関または保険医としての指定を取り消すことになり、最大で5年間保険診療ができなくなってしまいます。
上記のように、個人指導の対象になってもすぐに経営できなくなるようなことはありません。不正請求がなければ、再指導までで終了することが一般的です。
間違いや不備では要監査にはならないので、まずは落ち着いて問題点を受け入れましょう。
診療科別平均診療点数をチェックする方法とは
各厚生局のホームページにて、管轄内の都道府県の診療報酬明細書1件あたりの平均診療点数を、診療科別に公開しています。
(3)診療報酬平均点数は診療科ごとに異なる?
診療報酬の平均点数は、診療科によって異なります。ある程度の点数を掴んでおくと、医療機関の経営にも照らし合わせやすいため、おすすめです。
【令和5年度 東京都の診療科別平均点数】
内科(人工透析有):10,000点台
泌尿器科、産婦人科:3,000点台
内科(人工透析有以外(在宅)):2,000点台
小児科、外科:1,500~2,000点台
内科(人工透析有以外(その他))、精神・神経科、整形外科、耳鼻咽喉科、歯科:1,000~1,500点台
皮膚科、眼科:500~1,000点台
参考:令和5年度 東京都内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表(関東信越厚生局)
まとめ:診療報酬の平均を知ることで円滑な医療運営が可能に
都道府県の診療報酬の平均点数を把握してあると、売上金額や集患数といった具体的な目標や目安を掴みやすくなるため、効率的に経営できます。
また、点数を知っておけば、あらかじめ不備やミスを防ぐこともでき、厚生局からの指導を回避できるでしょう。
厚生局から個別指導を求められた場合、まったくの「問題なし」で終わるケースはほとんどないことが一般的です。
厚生局の目的は、医療機関の不備やミスを改善することです。問題点を改善すればこれからも経営を続けられますので、感情的にならずに対応しましょう。